管理会社が教える「マンション管理者の災害時の備え」とは~台風災害対策編~
- 2019年11月15日
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こんにちは管理部メンテナンスチームです。
今年2019年の台風19号(ハギビス)では信州・東海・関東・東北にかけて71の河川の氾濫をもたらし、8万棟余りの住宅が被害を受けました。死者は93名、行方不明者3名という多くの犠牲者が出た記録的な豪雨災害です。
関西でも、2018年の台風21号(チェービー)がもたらした風害によって、大阪空港の連絡橋の橋脚に貨物船が衝突し空港が孤立したり、市街地では屋根が吹き飛ばされたりフェンスが倒壊するなどの建物の損壊を伴う甚大な被害が起こったことも記憶に新しいです。
地球温暖化による影響でしょうか大型で強い勢力の台風やゲリラ豪雨などの自然現象による被害が多く見られるようになってきています。
台風の災害対応から学んだこと
関西を直撃した「2018年台風21号(チェービー)」による対応は、想像を超える被害をもたらし、その対応業務も非常に大変でしたが、貴重な経験をした事で現在の業務にも役立っています。今後も毎年のように大型台風が発生する可能性が高いので、できる限りの準備はしっかりと行うことが大切です。
では、我々管理会社は、オーナーの資産を守るためにどのような備えをしているのか、2018年の台風21号の例で少しご紹介させていただきます。
接近する前の対策
台風の情報は、テレビやインターネット、スマホアプリで事前に確認できますね。
台風の気圧、風速、移動速度、進路など情報をしっかりと確認することが大切です。そのうえで事前に以下のような対策を行っています。
排水周りを点検する
マンションの側溝や排水口などにゴミが詰まっていないか確認する。
水の流れが悪いと排水不良を起こし浸水する恐れがあります。
廊下の窓は閉める
中廊下の建物は、窓が開きっぱなしだと、雨風が直接建物内に吹き込んでくるため非常に危険です。廊下の窓は必ず閉めておきましょう。雨戸がある場合は雨戸も閉めておくと安心です。
浸水しそうな場所に土嚢を積む
管理マンションの中には大雨で過去に室内が浸水した事例もあります。
地域的に道路が冠水しやすい場所、あるいは建物の形状によって雨水が溜まりやすい等の特徴がある建物には事前に水の侵入経路に土嚢を積んで防止する必要があります。
土嚢は管轄の役所の道路管理課や防災課などへ依頼すると配布してくれることがほとんどです。
飛散しやすいものは避難させる
当然ながら、強風で倒れそうなものや飛んで行きそうなものは事前に避難させておきましょう。飛散しやすいものとして、消火器、カラーコーン、ゴミパッカーの蓋、自動販売機のゴミ箱などがあげられます。
移動可能なものは移動させ、移動が困難なものは飛散や倒壊を防ぐために構造物にロープなどで括りつけるなどの処置を施します。
応急処置のブルーシート・養生グッズを準備する
2018年の台風21号の被害時は、ガラス割れの際の養生ダンボールや屋根を覆うブルーシートが品薄でなかなか手に入らない、また必要量を揃えるのに時間がかかるという事がありました。
・ブルーシート
・布テープ
・プラ段(プラスチック製の段ボール)
・進入禁止テープ
・トラロープ
その時の教訓を経て、事前に必要量を想定して購入し、各地域の拠点に在庫しています。
台風接近が予想された時点で部材が手に入らないという事も考えられますので平時に確保して保管おきましょう。
台風通過後の点検シミュレーションをしておく
台風通過後には管理建物の点検を行い、被害状況を確認する必要がありますので、事前に人員の配置や役割分担を考えておきましょう。しっかりとシミュレーションをすることで、対応のスピードが格段に変わります
台風の規模、強さ、進路、最接近の時間帯などを確認してあらかじめ準備しておきます
河川の氾濫、堤防決壊、浸水のリスクを想定しておく
氾濫の危険性のある河川沿いの物件は特に警戒が必要です
行政の防災マップを確認し洪水や河川の氾濫などで浸水被害が予測されているエリアを把握しておきます
必要であれば入居者の避難を促す
河川の氾濫で浸水被害が予測されているエリアの物件は特に配慮が必要と思われます。特に低層階に高齢の入居者様、体の不自由な入居者様がいらっしゃる場合は、最寄に避難所が開設されているのであれば、早めに避難をしていただくなどの働きかけが必要です
台風接近中 ~外出せず情報収集につとめる~
台風が最接近して通過する際は、非常に危険です。
オーナー様にとって大事な資産が心配な気持ちはすごくわかりますが、自分の身に何かあればそれどころではありません。
自身の安全の事もしっかりと考えて、情報の収集に努めましょう。不要不急の外出は控えるようにしてください。
台風通過後
スタッフ総出で安全確認
台風の影響が十分に収まったら、まずは被害状況を正確に把握します。
2018年の21号の通過時は、あまりにも強風が吹き荒れて、危機的な状況であった為、通過した当日の夕方から深夜にかけて、スタッフで手分けして一斉に管理建物の状況の把握に努めました。
出来るだけ早く被害状況の確認と2次被害を防ぐ応急処置を
点検時にガラスが飛散していたり、天井が落下していたり、危険な状態が確認されたときは、撤去可能なものは撤去し養生するなどの応急の処置を行います。場合によっては近づかないように警告表示を行ったり通行禁止の措置をとるなど入居者の安全確保を行います。
まずは被害状況を正確に把握し、情報を得た上で今後の対策を検討しましょう。
被害があった場合
被害が確認されたら保険適用の可否確認と修繕手配(見積もり手配)
2018年の台風21号のケースでは当社の管理マンションでも非常に多くの被害に遭いました。
建物の屋根やフェンス、ガラスの破損、アンテナの転倒、ベランダパーテーションの破損など、挙げるとキリがありませんが、これらの被害はほぼ建物の損害保険で対応することができました。
オーナー様のご加入の保険の内容を確認の上、被害箇所(修繕箇所)の写真、見積書を用意します。復旧を急ぐあまり自腹で工事となると、多額の費用が発生する事になりますのでご注意下さい。
台風被害の所有者責任
被害状況が明らかになってくると、管理建物から飛んできた破片で車がキズついた等の連絡が入るようになります。
いくら建物には所有者責任があるとはいえ、台風は自然災害。このようなケースでも賠償しなければいけないのでしょうか?
設置・保存に瑕疵がある場合は損害賠償の責任を問われる可能性も
民法717条では【土地の工作物の設置または保存に瑕疵(かし)がある、ことによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は被害者に損害を賠償する責任を負う。】とされています。
設置または保存に瑕疵(かし)があるというのは家の屋根や設備が落ちそうになっている状態を放置し、台風などの強風によって飛散した場合などです。このような一般的に予見できた場合には賠償責任が発生する可能性があります
ただし、今回の台風のように非常に強い威力の自然災害であちこちの屋根が飛ばされるという状況であればこれは「不可抗力」であり瑕疵があったとは言えないので、損害賠償責任は発生しないというに事になります。
とはいえ普段から建物の管理状況には注意し、瑕疵のないように飛散防止など対策を施せるものはあらかじめ対策しておきましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回は一般家庭の備えとは別の観点で、管理会社として管理させていただいている建物の台風対策をご紹介させていただきました。
いくら対策をしても完璧という事にはならないかとは思います、想定を超える威力の自然災害には対策がまったく及ばないことも多くあると思いますが、それでもしっかりと事前にできる準備を行う事は大切です。
自主管理のオーナー様でご自身で対策されている方も多くいらっしゃると思います。もし所有物件でご不安になられるようなことがあればお気軽にユニヴライフまでご相談下さいませ。
ユニヴライフは安全で快適な”LIFE”を創造します