平成30年度定期調査報告制度の解説
こんにちは。
平成30年は、3年に1度の定期報告の年になりました。
建物をお持ちのオーナー様はこの制度と関わりが深くなる年になるかとお察しします。
この定期報告制度は、身近に業務を行っているスタッフにとっても複雑で、正確な理解ができている方は意外と少ないように感じます。
そこで今回は、この定期報告制度をまとめ、また関連する法改正を踏まえて、気を付けるべき点をおさらいしたいと考えています。
定期報告制度の概要
定期報告制度は建築基準法第12条に規定されている制度であり、建築物の所有者等が当該建築物について定期に有資格者に調査・検査を依頼し、その結果を特定行政庁に報告しなければならないという制度です。
※以前は特殊建築物と表していましたが名称が変更しましたのでご注意ください。
定期報告をしなければならない対象は大きく4つに分けられます。
まずはこの4種を覚えましょう。
1、特定建築物
行政庁で定める一定規模以上の建物を指します。以前は特殊建築物と表記されていましたが名称が変更になりました。
2、建築設備
換気設備や排煙設備、非常用の照明器具が対象
3、防火設備
随時閉鎖式の防火扉・防火シャッター・ドレンチャーが対象
4、昇降機等
エレベーターや遊戯施設(ジェットコースター)等です。
※1~4共に法定の義務であり、義務違反に対しましては罰則規定もあります。
今回のテーマはこのうちの1、と3、に関して解説します。
特定建築物ってなに?
特定建築物とは、学校・体育館・博物館・事務所・集会場・映画館・旅館・病院・診療所・託児所・百貨店・飲食店・遊戯場・公衆浴場・寄宿舎・サ付高齢者向け住宅・共同住宅等で一定以上の規模を有するものが対象になります。
文章で表示すると、理解が難しいので、大阪府の例で一覧を見てみましょう。
表にあるように、規模によって対象となるかならないかが変わるのですが、一番の特徴は、竣工年を起算とせずに行政の定める年度を基準とするところです。
そして、この対象建物の中で圧倒的に数が多いのが住居系の建物になり、今年が住居系建物の報告年度に該当します。
調査ってなにをするの?
代表的な事例では、次のような項目があります。
①敷地における劣化診断
②(ある場合)擁壁の劣化診断
③手の届く範囲で、タイル等を打診し、剥離有無の調査
https://youtu.be/DDmvOFeIMZA
打診音が違う箇所はタイルが壁面から浮いている(剥離している)と診断できますので、異常個所を指摘事項として報告書に記載しました。
④非常用照明の点灯試験
主に外壁塗装やリニューアル・屋上防水等、大規模修繕の必要性有無の診断するひとつの材料になります。
定期報告が必要となる共同住宅とは
住居系建物の内、例えば表中一番下の「共同住宅」を例に見てみますと、
その該当要件は
①3階以上に対象用途(つまり居住部)があり、1,000㎡以上のもの
②5階以上に対象用途があり、500㎡以上のもの
と記載されています。
これはすなわち、
①居住用建物で3階建て以上5階建て未満、かつ延床面積1,000㎡以上
②5階建て以上かつ延床面積500㎡以上
のいずれかが満たされていれば、点検報告が義務ということになります。
弊社の管理物件におきましては4割前後がこの要件に該当することになり、他社様におかれましても対象となる建物のすそ野は広いように感じます。
防火設備と特定建築物は異なる。
平成29年度より、法改正に伴い、従来の点検とは別に防火設備の点検が追加されました。
オーナー様にとどまらず同業者様からも「今年からこの点検が追加されたので、何をしないといけないのですか。」
とお問い合わせいただくことが増えてきました。
特定建築物の定期調査の一部として防火設備の検査が追加されたと誤解されている方が多く見受けられますが、
厳密には、別の点検制度になります。そして対象となる設備も特徴的です。
特定建築物 | 防火設備 | |
対象部位 |
敷地や建物の劣化 「常時」閉の防火扉 |
「随時」閉の防火扉・シャッター・ドレンチャーの作動状況 |
点検頻度 | 3年に1度 | 1年に1度 |
技術者 | 1、2級建築士等 |
左に加え、消防設備を取り扱えるもの |
消防法に基づく消防設備点検とはまったく別の制度で、対象点検部位も異なることを押さえていただきたいです。
消防法は消火器や自動火災受信設備、避難器具、連結送水管等を対象にしていますが前述の設備は点検の対象とされていません。
この違いは、建築基準法が延焼の防止や避難経路の確保を目的としているのに対し、消防法が火災の発生の周知や消火の適切な実施にポイントをおいていることによります。
売買の際、重要事項説明書に調査の有無を記載する必要があります。
改正宅建業法35条により、既存建物の検査、いわゆるインスペクション有無を記載・説明することが必要になり、注目されています。法改正の目的は中古住宅の円滑な流通を目的としその信頼性を高める狙いがあります。
インスペクションとは別段で、既存住宅の点検書類を保持しているか(宅建業法第35条第1項第6号の2ロ)を明示する必要があり、当該定期調査報告書類の有無も想定していることを国交省のガイドラインには記載されています。
すなわち、物件の売却を想定されている方にとっては、この点検を実施していることも、もはや当たり前でしょう。
痛ましい事故を繰り返えさないためにも、定期調査を実施しましょう。
2018年6月18日に大阪北部を震源とする地震におきまして、高槻市の小学校の壁が倒壊し、幼い命が失われた事故は記憶に新しいかと存します。
特定建築物定期調査報告制度は、「塀」も点検対象としています。
ニュースによると点検による問題点の指摘があったようですが、その問題提起が活かされなかったことについてはとても残念に思います。
本年度は特にこの事故により、「塀」の安全性が社会的に注目を集める年になることが容易に予想できますので、早めにこの点検制度を活かしてご所有されている、若しくは管理されている建物の塀のリスクをあぶりだす必要があるのではないでしょうか。
あとがきリンク集
大阪市・大阪府下「定期調査の対象となる建物」
http://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_anzen/teiho/teiho.html#1
神戸市「定期調査の対象となる建物」
http://www.city.kobe.lg.jp/business/regulation/urban/building/procedure/after/img/H30kenchiku_pamphlet.pdf
兵庫県下「定期調査の対象となる建物」
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks29/wd30_000000007.html
京都市「定期調査の対象となる建物」
http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000148200.html
京都府下「定期調査の対象となる建物」
http://www.pref.kyoto.jp/kenchiku/16000033.html
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